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ガラス作品「プリズム」


ガラス作品「プリズム」2018

三角柱のガラス内面に生じる全反射という現象を利用して空間の広がりを表現してみた実験的な作品。森の光景・海の光景の2点を制作しました。これ、実際に作ったらどう見えるのか気になっててずっとやりたいと思ってたんです。

「プリズム -森の光景-」

コツブヒメヒガサヒトヨタケが群生した苔の上を小さなオキナワヤマタカマイマイが散歩しています(シロソウメンタケも一束生えてます)。
5本のヒトヨタケが全反射で背面に映り込むことで、奥にキノコの森が続いているように見えるという構造です。
 

「プリズム -森の光景-」
 
タコクラゲが群れる海草藻場の光景で、海底には赤いルソンヒトデがいます。

実際に入っているタコクラゲは3個体ですが、こちらも見る角度によって多数のクラゲが群泳している光景が見えてきます。

透明ガラスを塗り重ねて造形しているため脈理のスジ模様が多く出て、せっかくの反射効果を邪魔してしまうという課題の残った実験作品ですが、これは佐竹ガラスのクリアを厚く重ねた場合はどうしても避けられない問題かも…。
こういうガラスの脈理は私的には魅力的な要素でもあって、ポジティブな”見立て”をして表現として楽しむのが一番。風や水の流れ、氷柱の中の凍りついた景色、温度差のある水が混じり合う際の美しい揺らめきなどなど、自由に想像を膨らませられる部分です。

 
 
この作品は動画で見てもらった方が伝わりやすいです。ガラス内面の反射に注目してご覧くださいませ。角度の変化によって背景の反射が出たり消えたりするのが分かると思います。

入射角がある一定の角度(臨界角)を超えた時に、入射光が境界面を透過しないで全て反射するという現象が”全反射”。
(追記)ガラスの中から空気面に光が向かう時の屈折率の差が大きいほど全反射が生じやすくなります。私が使用している佐竹の鉛ガラスはガラス類の中でも屈折率・反射率が特に高いいわゆるクリスタルガラスなので、カットを施して反射や屈折を強調したい今回のような作品には最適な素材と思ってます。

それぞれのサブタイトル「森の光景」・「海の光景」は、こんな光の特性で作り出す景色っていうのを意識した言葉です。

 

三面それぞれの光景と上面からの俯瞰の景色が楽しめて、中の生き物たちをレンズ効果なしでぐるっと観察できるのは他の作品にはなかった魅力かも。この形、削って磨き出すのがなかなかに大変でした…(慣れない作業なので…汗)。


 
 
 

 
 
 

傘が反り返った状態のキノコって初めて作りました。
以前カサノリを作るときに開発した表現(笑)

 いつも作るのに苦労しちゃうミニタコクラゲさん。
 
 

森の光景:高さ33mm x 幅29mm
 
 

 海の光景:高さ33mm x 幅29mm
 

「プリズム」は思った以上に狙い通りの作品に仕上がったのでとても満足。なんだか今年は色んな表現に挑戦する年みたいになってるような…(笑)。

 
 
 


これらの作品は今月のグラス2Hオークションに出品しています。
入札日は9月22日(土)。各作品の入札終了時刻は
・「プリズム -森の光景-」・・・22:30(自動延長あり)
・「プリズム -海の光景-」・・・23:00(自動延長あり)
です。

念の為、これらの出品作品のご注意点を。ガラスの塊から勘を頼りに削り出して研磨していますので、正確な正三角柱ではありません。気泡があった部分が削り出されたところは凹みもあります。

私の作品としては珍しい全面削り出しの直線デザインのオブジェですが、気に入ってくださる方がいらっしゃいましたらどうぞよろしくお願いいたします。