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ウミヘビの「サンゴ石」

ずっと創りたかったイイジマウミヘビのガラス作品が完成したので紹介します!

イイジマウミヘビは僕が昔ウミヘビ研究をやっていた時に主な対象としていた種で、13年間座間味島の海で調査・観察し続けた思い出深い生物です。
ガラス作家になってからずっと作品にしたいと思い続けていましたが、表現方法を試行錯誤し続けて作家歴17年目にしてようやくなんとか形にすることができました!

「サンゴ石」2025

海で拾ったモノの中に海の記憶の光景が映る「あの海を想う」シリーズのガラス作品。
海岸に転がっている小さなキクメイシ類のサンゴ石がモチーフで、石の中にはイイジマウミヘビとネッタイスズメダイ(黄色い魚)やカクレクマノミたちが泳ぐサンゴ礁の光景が見えます。
 

イイジマウミヘビはサンゴ礁でスズメダイなどの卵を食べて暮らしている魚卵専食のウミヘビです(コブラ科ですが魚卵しか食べないため毒は退化してほぼ無毒)。
繁殖期のスズメダイやクマノミはイイジマウミヘビが近づいてくると必死に攻撃して自分の卵を防衛するので、イイジマウミヘビはいつも彼らに突かれています。
そんなイイジマウミヘビと魚たちの攻防の様子をサンゴ石の中に再現しました。

上層にいるネッタイスズメとカクレクマノミはイイジマウミヘビの頭部を突こうとしていて、下層にいるネッタイスズメは尾部を狙っているという場面(実際に魚たちがイイジマウミヘビを追い払うために頭部と尾部を攻撃しているのをよく見かけます)。
このネッタイスズメたちは近くの岩の裏に、カクレクマノミは住み着いてるハタゴイソギンチャクの側に産み付けた卵を守っているようです。

海での様子↓

スズメダイの卵を探すイイジマウミヘビと警戒しているネッタイスズメ&ニセネッタイスズメ

クマノミさんこんにちは(卵を狙ってるので突かれてます)
 

↑小さなスズメダイの卵を削り取って食べている場面。
一般的にヘビ類は口のサイズに合った大きさの獲物を丸呑みする生物なのですが、イイジマウミヘビは口のサイズより極端に小さな餌だけを食べるかなり普通じゃないヘビで、ヘビ界の異端児なのです。

性格は温厚でとても大人しくて、ものすごく可愛い癒し系のウミヘビ。

 
イイジマウミヘビは横から見るときれいな縞模様ですが、この胴体の縞は左右非対称で数も左右で異なるため、背面から見ると不規則なジグザク模様になってる個体が多いです。



縞の数や幅もかなり個体差があります。

日本で見られるウミヘビ類はセグロウミヘビ以外は全て縞々の模様なので区別するのが難しいですが、背中から見てジグザグ模様になってるのはイイジマウミヘビ特有の特徴なのでこれで大まかに識別できます。
他のウミヘビたちは基本的に左右対称のリング状で背面から見ても整った縞模様になっています(イイジマウミヘビでも左右の縞数が同じ個体だとジグザグになっていないので完全な識別ポイントではありません)。
*イイジマウミヘビ以外のウミヘビは命に関わる強い毒を持っていますので100%区別ができる人でなければ絶対に素手で触ったりしないようにご注意ください!また、イイジマウミヘビの毒は実質無毒化してますが毒牙は持っているため噛まれると異物を注入される可能性があり、たとえ無毒でもアナフィラキシーショックを起こす危険性があります。

 
作品のちっちゃいイイジマウミヘビは鉛筆の芯とほぼ同じ太さ(約2mm)で、頭部の鱗の配置もほぼ実物通りに作ってます↓

 


とてもカワイイお顔。

掌の小さなサンゴ石の中に広がるあの海の記憶。
僕の大切な海の記憶をガラスで永久に記録したもの。

サンゴ石の部分ももちろん全部ガラスで、「元」のサインパーツはサンゴポリプの骨格の窪みの中に。

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ガラス造形作品「あの海を想う」シリーズ
制作時期:2025年2月
大きさ:43mm x 35mm x 20mm
材質:主に鉛ガラス・一部ソーダガラス(佐竹ガラス)
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この作品「サンゴ石」は2月22日(土)開催のGlass2Hオークションに出品しています。
落札終了時刻は21:50です(自動延長あり)。

本品には専用の木製標本箱が付属します。

記念すべきウミヘビ作品第一号、気に入っていただける方がいらっしゃいましたらどうぞよろしくお願いいたします!

 

もちろん僕自身すごく気に入っている作品なので今度は自分用のものを作るつもりです。

本当は自然環境シリーズのトンボ玉バージョンを先に創りたかったのですが、とにかく長いヘビなのでうまいことトンボ玉に収めるデザインが思いつかず…。イイジマウミヘビのトンボ玉も今後必ず完成させますっ。