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化硝研究所企画作品007番

久々に「化硝研究所」から謎化石の古生物復元依頼が来ました。

架空の地質年代「ギャプス紀*」の地層から出土した未確認化石を化硝研究所所属の専門家(ガラス作家)らが観察し、想像力を駆使してその生時の姿をガラスで復元するというグラスタウン・Co展の空想古生物創作企画です。

 *ギャプス紀は古生代~中生代の境目、概ね2億3800万年~2億6200万年前頃(フィクションです)

→ Co展「化硝研究所」

今回化硝研から復元を依頼された化石画像がこちら↓

ギャプス紀未確認化石007番

実物も手にとって見てみましたが….うーん…これは難しい。

硬そうな表面構造を持っていながら非対称に歪んだこの化石の状態から棘皮動物特有のキャッチ結合組織(硬さが変化する結合組織)を持つ生物、さらに大きな角状の物体に見られる一筋の深い溝の痕跡はヒトデ類の歩帯溝ではないかと推測。

つまりこの化石の大小2つ?の角状のものはヒトデ類の大きさが異なる腕の部分で、欠けていると思われる部分には更に複数の別の腕が生えていたと考え(さらに大きさの異なる腕を持つ意味も想像して…)、以下のような、イカのようなヒトデの姿に復元してみました。


Astrobelua sepioides(アストロベルア セピオイデス)

棘皮動物門/ヒトデ綱/詳細不明

学名の意味:コウイカに似た星の怪物
”Astrum”(星)+ “Belua”(野獣、怪物)、”Sepia”(コウイカ)+ “-oides”(~に似た)

アストロベルア セピオイデスはギャプス紀の海底に生息していたヒトデの仲間。
幼体は普通の7つ腕のヒトデの姿をしていますが、成長とともに各腕が別々の機能に特化していき、一つの大きな胴体腕、2つの眼腕、4つの捕食腕を持つイカのような姿になります。
  
各腕の役割

胴体腕:消化器官や発達した脳神経系を持つ胴体としての腕。腹面の歩帯溝から無数の管足を出し滑るように移動する。
 
眼腕:ヒトデ類の腕の先端にある赤い眼点を高度に発展させた高解像の視覚を持つ腕。
 
捕食腕:素早く柔軟な動きで獲物を捕獲する4本の腕。

 

 
生態

優れた視力とそれに伴う発達した脳、さらに捕食腕の柔剛自在のキャッチ結合組織を駆使した捕食術により海底で様々な生物を貪欲に捕食していたと思われます。また、長い消化管を持つ太い胴体腕のおかげで大きな獲物も丸呑みにすることができたようです(一般的なヒトデ類は消化管が短く体外で獲物を消化します)。↑海底を滑るように移動し素早く獲物に襲いかかるアストロベルア セピオイデス

このアストロベルア セピオイデスのように各腕に異なる機能を発達させるという特殊な方向に進化したヒトデは現生種では全く知られておらず、彼らもギャプス紀に突如出現して短期間ですぐに絶滅してしまった幻の生物のようです。
 


Astrobelua sepioides のガラス復元模型は色違いで3個体創りました↓

アストロベルア セピオイデス(黃)

大きさ:55mm x 38mm x 27mm

アストロベルア セピオイデス(青)

大きさ:60mm x 38mm x 25mm

 
アストロベルア セピオイデス(白)

大きさ:51mm x 33mm x 21mm

イカっぽいデザインがかなり気に入ってしまいまして、作るのがとても楽しかったです。
そしてなぜか3個体とも立たせることが可能。


展示台/収納箱兼用の紙製標本箱が付属します。


ヒトデの「眼」ってあんまり知られてないかもしれませんが、しっかりあるんです。
 

こちらは今年の夜磯で見つけて興奮したトゲモミジガイ
腕の先端をよく見ると…

赤いポッチが眼(眼点)です。

こちらのマンジュウヒトデもよく見ると….

やっぱり真っ赤な眼がポチッとついてます。
この眼はシンプルな構造の複眼で、解像度は低いながらも数メートル先のサンゴなどはしっかり見えているそうです。

ヒトデ類の多くは各腕の先端に印象的な赤い眼を持っていて、今回創作したアストロベルアもそんなヒトデの眼の存在を強調したデザインにしてみました。


この化石生物復元ガラス作品「アストロベルア セピオイデス」3点は5月23日開催のGlass2Hオークションに出品されています。
入札終了時刻は23日の22:15で、自動延長ありです。
*Co展企画作品ですが今回はグラスタウンさんではなく僕自身が出品しています。黄色い個体だけはグラスタウンさんからの発送になります。

一緒に出品している「潮だまり」と「苔石」もどうぞよろしくお願いいたします(終了時刻はそれぞれ21:30と21:45です)。

Glass2H

過去の僕の化硝研究所企画作品一覧は下の「化硝研究所」のタグから見ることができます↓