あちらの森の住人「フィルン」

あちらのお話。

ここしばらく「あちらの世界」に没頭しています。
何しろ我々の世界からは、お盆からハロウィンまでの限られた期間にしか覗くことができない世界です。このチャンスに少しでも多くの情報を集めなければと、気合を入れてヘルペトンの動きを観察し続けているところです。

とはいってもヘルペトン、動きがとても遅いのです。ひと月前にかの「ざくろ池」を離れた後、しばらく砂地や枯れ草原など荒涼とした寂しい土地をひたすらゆっくり歩き続けておりました。途中、何度か険しい岩場もさらにゆっくり通り抜け、ようやく景色に大きな変化が見られる場所に。

ヘルペトンがやって来たのは、枯れた樹木が鬱蒼と生え、林床に枯葉・枯草が生い茂る「枯木の森」。
この世界の植物たちは、枯れて朽ちた状態で普通に育っているのです。

風に吹かれた枯葉や枝がユサユサ揺れる森の中、それとは別にモソモソ動く奇妙な枯葉がありました。よくよく見るとただの枯葉などではなくて…。

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枯木の森の住人「フィルン」

初めて見るこの生き物はフィルン(Phyllun)と呼ぶことに。

フィルンはこの森にたくさん棲んでいるようです。

葉脈だけになった枯葉を背負っています。

よく見るとフィルンの体と枯葉は完全に一体化していて、フィルンたちは枯葉の丈夫な葉脈を自身の骨格として利用しているものと思われます。

紅い単眼が6つ集まって構成される特徴的な眼。
太い触角を常に動かして周囲の様子を探っています。

フィルンの生態は全く分かりませんが、どうやら大人しく臆病な性格の動物のようです。

体内には骨蛙が共生。
その他にも何種類か謎の浮遊物が流動的に動いています。
あちらの世界でも生物は他の生物に生かされているのでしょう。
　

ほとんど見えませんが、体の奥、腹側の方にヘルペトンのものと同様の神経系も確認できました。体の基本構成はヘルペトンやプルトンとよく似ています。

神経系（精神を司るところ）、骨（生物が作り出し最後に遺すもの）、共生、水…..あちらの世界の生物たちを理解するのに重要そうな言葉…。

　
ヘルペトンは何度かフィルンたちと接触しながら、ゆっくりと暗い森の深部に向かって歩いていきました。

まだまだあちらの世界の観察は続きます…。

とっても可愛いフィルンの観察記録でした。
あちらの世界の住人もヘルペトン、プルトン、フィルンと三種になりました。その中に骨魚、骨蛇、骨蛙など様々な住人が共生していて結構にぎやかです。

以下、ガラス作品としてのフィルンたちを紹介しますっ。

「フィルン」（小）
　

2019年9月制作
サイズ：53mm x 25mm x 20mm
材質：鉛ガラスに一部ソーダガラスも使用（佐竹ガラス）

「フィルン」（大）

2019年9月制作
サイズ：57mm x 28mm x 18mm
材質：鉛ガラスに一部ソーダガラスも使用（佐竹ガラス）

識別のために2匹を大・小としていますが
実際の両者のサイズはそれほど違いません。

フィルンの中の骨蛙さんの大きさは体長およそ5〜6mmです。初めて作るカエルさんがホネホネの子だなんて…笑。でも、これで普通のカエルも作れそうな気がしてきました。

僕の作品としてはちょっと異色の「あちらの住人たち」ですが、普段のテーマではなかなか作れないモチーフに挑戦する場と、一つの世界を構築してみる場として楽しみながら創作しています。こんな小さなガラスの動物骨格とか、誰も見たことのない表現がギュッと詰まった作品たちを想像したらもう創らずにはいられなくなって….汗。
この怪しい世界、どうぞもうしばらくお付き合いくださいませ。
m(_ _)m

これらの作品2点は今月のグラス2Hオークションに出品しています。

出品時点ではこの生物の名前がまだ決まっていなかったため「あちらの森の住人（小）」、「あちらの森の住人（大）」という仮タイトルが付けられていますが、作品ラベルに付けられる正式なタイトルはそれぞれ「フィルン」になります。

オークションの入札日は明日、9月24日（火）です。
これらの作品の入札終了時刻は
・「あちらの森の住人（小）」・・・21:45（自動延長あり）
・「あちらの森の住人（大）」・・・22:00（自動延長あり）
となっています。