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「あの海を想う -オニフジツボ-」

ガラス造形作品「あの海を想う」シリーズの新作を創りました。ずっと形にしたいと思っていたフジツボ作品がようやく完成です。
 
 

「あの海を想う -オニフジツボ-」(2020)

海岸で拾ったオニフジツボの化石に残されたあの海の記憶が今回のモチーフ。

オニフジツボ(Coronula diadema)はザトウクジラなどの特定の鯨類の皮膚に付着して暮らしている大型のフジツボで、化石になったものが海辺に落ちてたりします。

 

左が今回創ったガラス作品、右の大きいのがオニフジツボの実物の化石。さすがに実物よりかなり小さくなっちゃいました(若い個体ということで… ^^; )。
 

↑このオニフジツボ化石は25年くらい前に沖縄本島の金武町で拾ったもの。その時に僕が拾ったのは半分に割れた欠片だったけど、一緒に行った友人が見つけた別の欠片と合わせてみたらピッタリ1個になったという思い出の一品(半身を譲ってくれた友人に感謝っ)。

形だけでも相当かっこいい巨大なフジツボの化石なのに、これが大昔にクジラと共に広い海を旅してたことを想像すると、すごいロマンが溢れてきます。

 
 

灰色基調の化石がモデルですが、本来現生のオニフジツボは殻全体が白色です。この作品ではちょっと個性的な白と灰色のツートンの個体になってます。
 
 

フジツボの中を覗くと広く深い海を泳ぐ一匹のザトウクジラが見えます。一緒に泳いだ仲間のザトウクジラか、もしかしたらこのフジツボがキプリス幼生の時に自分の眼*で見た宿主のクジラの姿かも…。

*フジツボはエビやカニと同じ甲殻類の仲間で、着生直前のノープリウス幼生後期からキプリス幼生の時にだけ特異的な複眼が出現します。色も識別できる複眼で、自身がこれから着生する場所を視覚も使って判断しているらしいです。

 

このフジツボ作品の裏側は磨りガラス状になっているので光にかざして裏面を見るとクジラの影がガラス面に投影されます。表側と裏側を光にかざした時の雰囲気の違いが楽しめます。(このページの一番下に貼った作品動画を見ていただくとわかりやすいと思いますー)

珍しいのは全然持ってないけど、色んなフジツボたちの中に忍ばせて…。

ウミガメに付くカメフジツボも持ってたはずだけど、無くしてしまったみたい(涙)。
ちなみにウミヘビ類の体にも時々小さなフジツボ(ウミヘビフジツボ?)が付いてました。あれも採っておけばよかったなぁ。
フジツボたちも並べるとまた楽しい!
 

フジツボ作品の構想を練ってる時のこと。海で見つけたこのフジツボの中を覗いたら、すでにここで暮らしてたクモさんの記憶が入ってました。穴越しに光に透かした時の脱皮殻が妙に印象的で、こんなイメージで透かして覗く作品を創ることに。

座間味島に13年間通い続けてウミヘビを調査していた頃は、冬にやってくるザトウクジラを毎年楽しみにしていました。ザトウクジラは個人的にも色々思い出のある生き物で、当時の記憶も重ねながら創った作品です。
鯨類は映像イメージが世の中に溢れすぎて自分の作品に登場させるのを躊躇していたんですが、オニフジツボの強烈な存在感に乗っけてなんとか形になりました。 

タイトル:「あの海を想う -オニフジツボ-」
作品カテゴリー:ガラス造形作品・あの海を想うシリーズ
制作時期:2020年1月
材質:主に鉛ガラス、一部ソーダガラスを使用(佐竹ガラス)
大きさ:H24mm x W34mm x D31mm

動画もご覧ください〜。


この新作「あの海を想う -オニフジツボ-」は今月のグラス2Hオークションに出品しています。
入札日は1月23日(木)、本品の入札終了時刻は21:45です。
この作品は制作中にいつものサインパーツを入れる余裕がなかったので(汗)、サイン付きの木製標本箱/展示台を付属させる予定です。
それでは、今年最初のグラス2Hもどうぞよろしくお願いいたしますっ。