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カメフジツボ再び Glass2H

先月Glass2Hオークションに出品したものの直後にうっかりポトリの破損事故で泣く泣く出品取り消しとなってしまったガラス作品「あの海を想う -カメフジツボ-」。
今月のオークションのためにもう一度制作して無事に完成・出品しております。今度は絶対に壊しませんよ〜。

まず、前回は壊しちゃったんで詳しく書かなかった制作の経緯を。

カメフジツボはあの海シリーズとして是非とも作りたかった魅力的な生物なのですが、僕が持っていたはずのカメフジツボ標本はいくら探しても見つからず(どこいったの…涙)、作品制作に取りかかれないまま次に海で拾うまで我慢しようと思ってました。が、先々月にカメフジツボ研究者の林亮太さんに貴重な標本を頂いてしまいましたっ。もう感謝感謝です。それですぐに制作に取り組んでなんとか完成させることができました。

今回オークションに出品した作品がこちら↓

「あの海を想う -カメフジツボ-」2020

ウミガメ類に付着して広い海を旅するカメフジツボ。
海岸で拾ったカメフジツボの殻に残された海の記憶が今回のモチーフです。

フジツボの中に見えるのは海を泳ぐ一匹のアオウミガメ。

この光景はカメフジツボがキプリス幼生時代に生涯の主となるウミガメを見つけた時の、最後に見た自分の主の姿かもしれません。
(キプリス幼生は眼を持っていますが、亀の背中に着生してフジツボの姿になると眼を失ってしまいます)

左:アオウミガメはいくつかの過去作品でも登場していますが、これまでのものは孵化幼体で本作のは成体ということで、この作品のために新たに模様の入った成体の甲羅パーツを制作しました(これが一番大変でした)。プロポーションもより成体っぽくなってます。
頭部は2枚の前額板をもっと強調したほうがよりアオウミガメらしかったかも…。
このアオウミガメの甲長は約6mmです。

右:隙間についているのはカメフジツボの矮雄。
 
 

左:中央の窓は凸面になっているので端の方は歪んで見えますがいろいろな方向から覗き込むと良い雰囲気。透明部表面にはいくつかの細かな気泡があります。
右:裏側は沢山の溝を彫り込んであります。画像の左下の方に茶色いヒビ割れのようなものがありますが、これらは白ガラスに混じった透明系ガラスが細い筋状に見えているだけでヒビじゃないです。


光源に向けて裏側から覗くと磨りガラスにウミガメのシルエットが投影されます。

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あの海を想うシリーズ作品
制作時期:2020年12月
大きさ:H17mm x W53mm x D47mm
材質:主に鉛ガラス、一部ソーダガラスを使用(佐竹ガラス)
個体番号(作品番号):No. 2020074

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次にカメフジツボという動物についてもさらっと紹介しますね。

カメフジツボ(Chelonibia testudinaria)はウミガメ類の甲に付着して暮らしている大型のフジツボ。
多くのフジツボ類は一度着底したら一生そこから移動できませんが、カメフジツボは例外的に非常にゆっくり長い時間をかけてカメの背甲上を移動することが知られています。すごいっ。

6枚の三角形の殻板で周殻が構成されています。一番幅の広い殻板(写真の左側)が前側で、こちらをウミガメの頭側(進行方向)に向けて付着している個体が多いです。ウミガメの甲上は常に水流の方向が決まっているのでフジツボの向きもそれに合わせて揃っているんですね。
*一番広い殻板は実は3つの殻板が融合していて、本当は8枚の殻板で構成されてるそうです〜。


剥がした裏側には細かい溝が走ってます。中央の空間にいるエビみたいなやつがフジツボの本体。フジツボはエビやカニと同じ甲殻類です。

ウミガメ類の体表にはたくさんの生き物たちが棲んでいて、ウミガメ自体が多様な生物たちの暮らす島みたいな存在になっています。さらにそこに棲むカメフジツボの表面にも様々な生物が….。観察していてとても面白いです。

↑カメフジツボの殻板の間に謎の泥の筒…中から出てきたのはウミガメドロノミたち。

左:他にもエボシガイの仲間
右:マルゴエラビル(オオウミエラビル:薄橙色の生物。生時は白色)。

隙間に嵌っているフジツボ。これは同種カメフジツボの矮雄(わいゆう)と呼ばれる精子提供に特化した小さな雄。チョウチンアンコウのオスと同じあれですね。
僕の作品には3個体の矮雄が付いています〜。

明日(2020年12月23日・水)は今年最後のグラス2Hオークションの入札日です。
僕はガラス作品2点を出品しています。 
・「魚石(5個体入, 白石)」….22:00 入札終了予定
・「あの海を想う -カメフジツボ-」…. 22:15 入札終了予定
どちらも自動延長ありです。

この魚石については別記事で紹介しますね。

また、コレクター様からも僕のトンボ玉作品2点が出品されています。
僕が駆け出しの頃に作った「キノコ培養器」とかすごく懐かしい!

それでは本年最後のオークションもどうぞよろしくお願いいたします。
→ Glass 2H