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空想古生物(軟体動物門)

とある地域の極めて薄い地層から発見された奇妙な形の貝殻化石たち。未だに詳細な生息年代も特定されていませんが、限られたエリアでごく短い期間に独自の進化を遂げてすぐに絶滅してしまった幻の軟体動物群と考えられています。
今回、謎に包まれた彼らの生時の姿を化石に残された僅かな痕跡から推測し、3属5種6点の復元模型を制作してみました。

(模型は貝殻部分を陶器で、軟体部分をガラスで復元しています)

貝殻亜門・二枚貝綱
Ocarinostrea 
属 1種

左: Ocarinostrea crocodila (ver. 1)  右: Ocarinostrea crocodila (ver. 2)
ver.1 と ver.2 は復元イメージのバリエーション違いです。

本属の解説:
上下の殻で顎を形成する肉食性の二枚貝。殻に並んだ12個の穴(殻孔)から発達した1対の眼と5対の翼状の軟体部(運動器官)を出して活発に遊泳していたと考えられます。

学名の由来:
属名 Ocarinostrea(オカリノストレア)は穴が並んだ殻の形状から”オカリナ型の (ocarina) + 牡蠣 (ostrea)”の意。
種小名 crocodila(クロコディラ)は顎部分を横から見た姿から”ワニに似た”の意。


貝殻亜門・腹足綱
Gnathoconchus
属 2種

左:Gnathoconchus polycornutus  右:Gnathoconchus tibicinis 

本属の解説:
顎を持つ肉食性の巻貝*。貝の蓋部分を下顎として機能させることで強引に顎構造を獲得したグループ。殻孔から眼、ヒレ状の運動器官、気嚢(浮力調節器官・浮袋)を出して中層を漂っていたようです。

補足* – 発見当初はその殻の形状から厚歯二枚貝の仲間とされていましたが、貝本体と蓋部分が完全に遊離し蝶番が見当たらない点などから今では蓋が顎状に発達した巻貝の仲間と考えられています。

学名の由来:
属名 Gnathoconchus(グナトコンクス)は”顎 (gnatho) + 巻貝 (conchus)”の意。
種小名 polycornutus(ポリコルヌトゥス)は背面に並んだ円錐形の突起から”多くの (poly-) + 角の (cornutus)”の意。
種小名 tibicinis(チビキニス)は背面に穴の並んだ貝の形状を笛に見立てて”笛吹きの”の意。


貝殻亜門・頭足綱
Calliscaphis 
属 2種

左:Calliscaphis lunata  右:Calliscaphis passerina

本属の解説:
独特の形の殻を持つ頭足類。殻孔からヒレ状の運動器官を出しています。殻と軟体部でクジラのようなフォルムを形成する殻長10cmに満たない小さな生物。

学名の由来:
属名 Calliscaphis(カリスカフィス)は不思議な舟のような貝殻の形状から”美しい (calli-) + 小舟 (scaphis)”の意。
種小名 lunata(ルナータ)は細く弧を描く殻の形から”三日月型の”の意。
種小名 passerina(パッセリナ)はややふっくらした殻の形を雀に見立てて”雀に似た”の意。


補足説明 – 殻孔から軟体部を出す独特の構造は本化石群の軟体動物にのみ広く見られる特徴です。ただ、この特徴が二枚貝綱、腹足綱(巻貝類)、頭足綱の3グループで個別に獲得された形質である点は非常に興味深く、この形質の進化に地域特有の環境等外的要因が関係している可能性も考えられます。



と、それっぽく紹介してますがこの記事のタイトルの通りもちろんすべて私の妄想による架空の古生物たちです。

蓋を顎にしちゃった巻貝とかちょっとやりすぎな設定かとも思ったけど、調べると一部のアンモナイト類は大きな下顎(アプチクス)を反転させて蓋として使ってたらしいとか….。あのフナクイムシやエントツガイが二枚貝の仲間だという事例を見ても、もう何でもアリって気がします(笑)。

古生物の復元イメージって、その生物の情報が少ない初期のものほど研究者の空想で補ってる部分が多くて面白いです。ハルキゲニアもひっくり返ってたり変な頭がついてたり…研究者のワクワク感はハンパないでしょうねぇ。

Co展サイトで先に紹介されてますが、これらは「瞑想の楽しみ方」企画の後半6点のからっぽ玉として制作したもの。普段創りでない作品、普通では作品として表に出ないものをからっぽな頭で創るっていう企画なので、ミクストメディアのフィギュア作品に初挑戦っ。この企画、たっぷり楽しませてもらいましたよ〜。

きっちりと設定を練ってから制作した作品と思われるかもしれませんが、最初は単純に謎の軟体動物モンスターとして完成イメージもぼんやりした状態のまま作り始めました(そういう趣旨の企画だと思って…)。上記の細かい設定は全て制作途中〜完成後に思いつくままに付け足していったお話です。

↑制作の様子。
左:こんな感じでパーツを準備して最後に接着して完成。
右:Calliscaphisの頭部候補。実際に色々作ってみて一番好きな形を選択。結構悩みましたよ…。

↓動画も作りました。前半は空想展示室、後半は作品をくるくる回してご紹介〜。

動画内の小さな文字は大きな画面で高画質に設定しないと見えないかも…(内容は上に記した情報とほぼ一緒ですので)。

Co展を頻繁に見てくださってる方はとっくにご存知かと思いますが、この作品6点をグラスタウンに送った時にアクシデントが発生しましたっ(涙)。
長文になっちゃったのでその辺の詳細は次の記事で。