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新作「魚石ノ水石」

「魚石ノ水石」2020

ガラス造形作品・魚石シリーズの新作。
タイトルの「魚石ノ水石」は “ぎょせき の すいせき” と読みます。

*魚石の読み方は僕の作品の中では通常は “さかないし” ですが、”魚石類” などと分類群として記した場合は “ぎょせきるい” と読んでます。魚(さかな)と魚類(ぎょるい)の関係。このタイトルでは音の響き優先で “ぎょせき” です。

水石(すいせき)は自然石の姿を景色などに見立てて鑑賞する日本の伝統文化。盆栽とも深く結びついています。
「魚石ノ水石」は 魚の鑑賞が主目的の魚石に、石自体の姿を愛でる水石としての趣を加えた作品です。
 

解説

最近、新たな魚種 sp. G の魚石が発見されました。既知の魚石類の扁平な丸石とは異なり、この魚は不定形の石の中に棲んでいます。これまでの魚石調査では経験的に丸石に絞って探索していたため、このような歪な石に棲む魚は長年見つけられなかったようです(自然状態の魚石は中の魚も見えず外見はただの石ころなので、見つけるのが非常に難しいのです)。
この sp. G の不思議な形の石は水石としての趣を持つことから、魚石磨き職人は石の姿を山水風景と重ね、透明窓を磨き上げる部分を慎重に決めて鑑賞石「魚石ノ水石」として仕上げます。

*青字部分はフィクションですよ。

本品は水石の中でも「溜まり石」や「滝石」に類する形状で、大岩の凹みに溜まった水が岩肌を伝って流れ落ちる様を模して透明窓が設けられています。
飾っている水盤は古いガラスシャーレを磨りガラス加工したものを使用。
水盤が理化学機器のシャーレなのは、これまでの僕の作品展示の博物的なテイストと水石の飾り方をすり合わせた結果です(笑)。

 
 

石の内部は真っ暗ですが、真上から光を入れた時だけ青緑色に輝く底が見えます。中には緑の藻のような泡が層になって浮いていて、水底には白い砂粒が溜まっています(ただし屈折によりハッキリと見ることはできません)。
魚種 sp. G は黄色を含むオレンジ色。真っ暗な背景にも映える明るい体色です。広い石の内部には2匹の魚がゆったりと暮らしています。

 
 

底に「元」のサインパーツ。ここだけ少し作為的なデザインにして遊んでます。持つとずっしりと重みを感じる石。 

  

↓ぐるぐる回してる動画。石肌の質感や魚の立体感がわかりやすいと思います。

もちろん、これは僕が創ったガラス作品なので自然石の偶然の景色を愛でる水石とは全く別物だということは認識しています。あくまでも魚石が存在する世界の中でこんな不定形の石が見つかったら、磨き職人たちはこぞってその魚石に水石の美意識を融合させてこんな感じの鑑賞石に仕上げるでしょ〜、っていう妄想を形にしたものです。
 

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タイトル:「魚石ノ水石」
作品カテゴリー:ガラス造形作品・魚石シリーズ(魚種: sp. G)
大きさ: H39mm x W36mm x D29mm 
材質:鉛ガラスに一部ソーダガラスも使用(佐竹ガラス)
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この新作「魚石ノ水石」は今月のグラス2Hオークションに出品しています。
入札日は2月25日(火)、本品の入札終了時刻は21:30です(自動延長あり)。

sp. Gという新たな魚石はこれまでの魚石類と大きく雰囲気が異なっていて、個人的には暗い背景に浮かぶ魚たちがとても新鮮です。そんな魚石シリーズの新展開の第一号作品。
付属のシャーレは古いものをヤスリがけして磨りガラス状に加工にしているのであちこちに古い傷や新しい傷があります、ご了承くださいませ。敷砂として大理石の砂も付属します。

それでは、今月のグラス2Hもどうぞよろしくお願いいたしますっ。

余談。水石といえば…。

これは20年以上前に西表島で採集した “鈴石”(赤鉄鉱のノジュール) 。中が空洞の石で内壁の一部が遊離しているものがあり、振るとカタコト・シャラシャラと面白い音がします。当時僕が夢中になって探したのは、極まれに鈴石の中に水が閉じ込められているという”水石(みずいし)” 。振るとチャポチャポと心地よい音がする石ですが、結局自分で拾えたことは一度も無くて今でも憧れてます。

その鈴石・水石(みずいし)が僕の魚石創作のイメージのもとになってるという話はずっと前にブログで書いてますが、その”みずいし”についてネットで調べた時、たくさん出てきたのは “すいせき”の情報。思えばそこから石の景色を愛でる文化に少しずつ興味を持った気がします。そういえば祖父の家の玄関にも台座に乗った梅花模様の綺麗な石とか、いくつか水石(すいせき)が飾られてたなぁ、と思い出したり…。

「魚石ノ水石」は、僕のそんな石に対する想いが上手いこと一つの形になった作品です。