“分解”のお題で真っ先に思い浮かべたのは落ち葉のこと。森林での物質循環において非常に重要な位置を占めているのが落葉の分解です。そんなことを考えながら林床の生き物観察を…。
台風の影響で林床の環境がちょっと変わってしまったけど、今年もいつもの場所で腐生植物のルリシャクジョウが生えてたので一安心。毎年この色を見るのが楽しみです。
林床で菌と共生している腐生植物(菌従属栄養植物)なら間接的に落葉の分解に関わってる?って思ったけど、ルリシャクジョウは植物と共生するアーバスキュラー菌根菌から栄養をもらっているので落葉の分解とは関係ないみたい。
ヤッコソウにも会えたけどもう先端が黒くなってて古めのばかり。この状態も好きだけど、生えたての先まで綺麗なピンク色の状態もじっくり見たかったなぁ。ちょっと遅かった…。
ヤッコソウはスダジイの根から栄養をもらっている寄生植物。生産者をやめたキノコっぽい植物だけど、やっぱり落葉の分解には関わってません。
傘が3-4mm程度の小さなキノコが落ち葉から生えてました。落ち葉ってよくよく見てみると小さなキノコが色々と生えてますよね。
これらは落葉の分解に大きく関わってる落葉分解性の担子菌類で、菌糸が枯葉のリグニンなどを分解してるらしいです。植物のリグニンやセルロースは分解できる生物があんまり多くないのでとても大事な存在。
傘の裏でちょこちょこ踊っていたのは可愛いダニたち。色違いがなんだかステキなこの子たち、調べたらウブゲテナガハシリダニっぽい。
小さなダニ類は落葉の物理的な分解に関わってるものも多いですが、ハシリダニ類は主に捕食性みたいなので直接的には関係なさそう。ダニといえば他の動物に寄生して血を吸ってるイメージが強いけど、自由生活してるダニも沢山います。
枯葉ならうちの庭にもたくさん落ちてるので、庭でもじっくり観察。
庭のホルトノキの枯葉にたくさん生えていた粘菌のシロジクキモジホコリ。
粘菌は変形体のときに枯葉についた細菌類や菌類を主に食べていて、直接的な分解者じゃなくて分解者の数を制御する役割を持った生き物だとか…。
落ち葉を裏返すと1mmもない小さな白い物が。拡大してみるとヒダが4つしかない小さなキノコの裏側でした。四葉のクローバーみたいでカワイイ。これはしっかり落葉を分解してる担子菌類。
枯葉の上を歩いていたのはイレコダニの一種。体長1mmに満たない小さなダニで、庭にいるダニ類の中で一番良く見かけたのがこの種。
イレコダニは落ち葉を細かく粉砕して食べているササラダニの仲間。ササラダニ類はダニ類の中でも特に多様性が高いグループでほとんどの種が落葉の分解に関わっているそうです。ダンゴムシやヤスデ類と共に物理的な落葉分解者の代表的存在。
イレコダニって驚かすとコロンと落ちて、脚を引っ込めて頭で蓋をして防御姿勢をとるんですね。小豆みたいでとっても美しい形。
アルマジロやダンゴムシと同じ防御方法をこんな小さなダニもやってたなんて面白いですねぇ。動きもゆっくりで、見れば見るほど可愛いらしいダニです。
そして積もった落ち葉が様々な生物によって分解されていく過程の混沌とした雰囲気自体が、なぜかとても美しく感じて魅入ってしまいます。
そんな落葉の分解をガラスで表現するとなると、かなり悩みました。自分を鍛える企画としてはこれまでやったことのない手法も取り入れて創作したいところで….。
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完成っ!
つづく。