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魚石類六種入標本箱(小粒)

魚石の話。

こちらは魚石研究者だった増永博士が所有していた小さな箱。
長い間、研究室の奥にそっと仕舞われていたものです。
(標本箱の大きさ:W145mm x D110mm x H40mm)

蓋のラベルには「魚石類六種 標本」と記されています。
博士が2019年に制作した魚石の標本箱のようです。

よくよく見るとなにやら小さな文字が。
「ミニミニ」?

前面に取り付けられた古びた留め具。
つまみを回してロックを外し、慎重にそ〜っと開けてみます。

パカリ。

中にはとても小さな魚石が6個収められていました。
たしかに「ミニミニ」の石たちです。

当時確認されていた魚石類 sp. A – sp. F の小さな石が詳細なスケッチと共に収納された標本セット。形態的多様性を研究するためのサンプルとして使用されていたもののようです。
小粒の魚石自体かなり発見例の少ないもののはずですが、それが6種分も揃っているこの標本箱は博士にとって極めて貴重なコレクションだったに違いありません。

各石の大きさは直径21mmから23.5mmほど。

博士が長年愛用してきた実体顕微鏡で魚石を観察してみます。
 

上段左からsp. A, B, C。下段左からsp. D, E, F。
小粒の石でも中の魚は大きな石と基本的に同じ形態です。

魚石の裏面。色違いで並んだ石がとても綺麗。

観察用の窓を磨き上げる前の、魚石本来の表面の状態もこんな感じだったと思います。

長い間箱の中で眠っていた魚石たちには久々の太陽の光です。

石の内部が微かに発光しました。太陽光の刺激で魚たちの活性が上がったのかもしれません。どうやら標本といっても長期休眠中の魚石をそのまま箱に入れただけの生体標本のようです。魚たちは眠っているためあまり動きませんが…。

博士の研究記録には、「休眠中の魚石を水に数日間漬けておくと、石が水分を吸収して膨らみ(中略)、徐々に魚たちが覚醒して活動状態となる」という実験結果が記されています。さらに「魚石は水分と過度な光を避けることでいつまでも休眠状態を保ち続ける」との興味深い記述もありました。
この標本箱の魚石たちが次に目覚めるのは、いったいどのくらい先なのでしょう………。

*魚石の標本には採集日や採集地に関する情報が一切記されていないようです。これは博士が学術標本としての価値よりも生息地の保護を優先していたためではないかと思われます。


以上、今回制作した大物作品「魚石類六種入標本箱(小粒)」を、魚石の世界観に基づいてフィクション混じりで紹介させて頂きました。

ご存知の方も多いとか思いますが、この作品は2014年にグラス2Hに出品した作品「魚石類五種標本箱」と同デザインで、あれの小型姉妹品として創りました。前作はトンボ玉作品、今作は全て穴の空いていないガラス造形作品の魚石です。それにしても、あれからもう5年も経ってしまったんですね…汗。

この「魚石類六種入標本箱(小粒)」は今月のグラス2Hオークションに出品しています。
入札日は明日5月23日(木)、入札終了予定時刻は22:30となっています(自動延長あり)。

ではでは久々の大物セット作品、どうぞよろしくお願いいたしますっ。

Glass 2H