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化硝研究所企画作品004番

グラスタウンのCo展企画「化硝研究所」に今回も参加しています。

これは「ギャプス紀*」という架空の地質年代の地層から出土した未確認化石をガラス作家たちが観察し、想像力を駆使してその生時の姿をガラスで復元するという空想古生物創作企画。
 *ギャプス紀は古生代~中生代の境目、概ね2億3800万年~2億6200万年前頃らしいです(フィクションです)。

→ Co展「化硝研究所」

今回化硝研から復元を依頼された化石がこちら↓

これってアレの化石?とも思ったりしましたが、このノジュールが発見された地層の地質年代は「ギャプス紀」ということでやっぱり未知の古生物のようです。

この化石を様々な角度から詳しく分析した結果、以下のような不思議な古生物の姿が浮かび上がってきました。

節足動物門/甲殻亜門/軟甲綱/十脚目/所属不明種

Armacaris hexaptelus(アルマカリス ヘキサプテルス)

幾何学模様の非常に硬い頭胸甲と3対のヒレ状付属肢が特徴的なエビ型の甲殻類。
第3〜第5歩脚先端の指節が大きなヒレのような形状になっています。

極めて高い遊泳能力を持っていましたが体が大変重いため長時間の遊泳には向かず、基本的に海底の砂地で生活していたと考えられます。

現在のエイやヒラメ、ホウボウなどの魚類と類似した生態を持っていたようで、砂地の表面をヒラヒラと移動して砂中や砂上に住む底生生物を捕食し、休息時には硬い甲だけ砂から出してじっと身を潜めていたと思われます(大きなヒレ部を砂に埋めることによって捕食者に体をひっくり返され難くなり、柔らかい腹側が攻撃されるのを防いでいました)。

学名 Armacaris hexaptelus *の意味は Arma-caris:「鎧の海老」, hexa-ptelus 「6つの翼」。
しかし、”翼”は古代ギリシア語で πτερα(ptera)であって ptela ではありません。実はこれ、LとRを混同しがちな日本人研究者が単純なスペルミスに気づかずに記載してしまい、それがそのまま正式な学名となってしまったもの。意味的に正しい綴りは hexapterus ですが、学名は後から簡単に修正できるものではないため記載時の hexaptelus が本種の正式な種小名です。
そんな謎のエピソード付きの名前(笑)。
 *この化石種の記載論文が出ている設定で種名が与えられています。もちろんフィクションです。

そしてこの復元図を立体化したガラス復元作品がこちらです↓


なかなか良い感じに再現できたと思います。ただ、これかなり小さな復元モデルでして…

今回復元する生物はとても繊細な形状のためガラススカルプチャ作品では強度的に難しいと判断しまして、僕がより作り慣れているクリアガラス内に立体造形する表現手法で作ることにしました。
せっかくなので外側はこの生物の甲の部分の化石を模してみました。
もちろん「元」のサインパーツ入り。

ルーペで見ると細かな模様が見えてきます。制作した作品はこれ一点のみですが、この一点のために大きなガラスの模様パーツをいくつも細く引き、そこから各々ひとカケラだけ使ったかなり贅沢な作り(笑)。
裏から強い光を当てると内部に仕込んだ色ガラスによってちょっとカラフルに見えたり…。

展示/収納兼用のラベル付き紙製標本箱が付属。


この作品「アルマカリス ヘキサプテルス」は11月22日開催のGlass2Hオークションに出品されています。グラスタウンさんからの出品・発送になります。
入札終了時刻は22日の22:30です(自動延長あり)。
どうぞよろしくお願いいたします。

Glass2H


この化石の復元には僕の他に2名のガラス作家、礒野昭子さんと谷口知惠子さんも参加していて、それぞれ独自の解釈で不思議な復元生物を創られています。今回もみんな面白いです!

前回僕が制作した復元生物作品はこちら↓

謎化石の復元生物作品